64歳11カ月の基本手当がお得


「基本手当」って何のとこだか分かりますか?会社に勤めている人が退職して、次の仕事が見つかるまでもらう失業保険のことです。雇用保険法ができて、「基本手当」と呼ばれるようになりました。法律用語です。会社勤めをしている人には、定年退職があります。定年の時期が近づくと、「いつ退職しようか?」「まだまだ仕事を続けようか?」とても悩まれています。今回は、「雇用保険の基本手当と年金の関係」をご紹介したいと思います。
みなさんは64歳11カ月で退職するとお得って聞いたことがありますか?

 

退職を考える時期

内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によりますと、60~64歳で仕事をしている人の割合は男性85.8%、女性62.6%の人が収入を得て仕事をしていることがわかります。そして、65~69歳になると、男女ともに仕事をしている人の割合が約25%も減ってしまいます。65歳前後に離職を考える人が多いことがわかります。

 

基本手当と高年齢被保険者

⑴基本手当って?

・雇用保険に加入していた人が65歳の誕生日の前々日までに退職すること
・働く気持ちはあるけれど、求職活動をしても、就職できていないこと
・自己都合や定年等で退職は、退職前2年間に11日以上働いた月が12カ月あること
(倒産・解雇等で退職したときは、退職前1年間に6カ月以上あること)
この条件がそろうと、基本手当がもらえます。

 

⑵基本手当は何日あるの?

退職の理由が自己都合の場合と倒産・解雇等の場合では、日数が異なっています。(倒産や解雇等で退職するときは、日数が長くなっています。)
定年退職した場合は、表1の日数が支給されます。

 

表1:定年、契約期間満了や自己都合退職の方の基本手当の所定給付日数

     被保険者で

あった期間

離職時の満年齢

10年

未満

10年以上

20年未満

20年以上
65歳未満 90日 120日 150日

資料:厚生労働省(ハローワーク)

 

⑶基本手当はいくら受け取れる?

基本手当は、退職した日の直前、6カ月の給料から、賃金日額を計算して、それを基に基本手当日額を計算します。年齢によって異なります。
60~64歳の場合の基本手当日額の上限額(令和3年2月1日~)は表2のとおりです。

 

表2: 賃金日額・基本手当日額の上限額

離職時の年齢 賃金日額の上限額 基本手当日額の上限額
60~64歳 15,970円 7,186円

資料:厚生労働省(ハローワーク)

 

⑷65歳以上の基本手当は?

65歳以上の退職者(厳密には、手続きの関係から65歳の誕生日の前日以降に退職した人です。)は、表3の高年齢求職者給付金を一時金でもらうことができます。

 

表3:高年齢被保険者(65歳以上で退職された方)の給付金

被保険者であった期間 1年未満 1年以上
高年齢求職者給付金の額 30日 50日

資料:厚生労働省(ハローワーク)

 

たとえば・・・

勤続20年 日額7,000円 会社員Aさん(64歳11カ月で退職)

 

@7000×150日=1,050,000円 表1の日数

 

勤続20年 日額7,000円 会社員Bさん(65歳で退職)

 

 

@7000× 50日=350,000円 ※表3の日数

 

なんと差額は700,000円!!

 

基本手当と年金の関係

⑴65歳未満の場合

基本手当と特別支給の老齢厚生年金(注)は、同時に受けることができません。基本手当の申込みをすると、年金が全額支給停止となります。基本手当の申し込み前だと、基本手当か年金か有利な方を選択することができます。(会社員Cさんの場合)
(注)特別支給の老齢厚生年金とは、男性は、昭和36年4月1日以前に生まれた人、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた人が、要件を満たせばもらえる年金です。 

 

⑵65歳以後の場合

高年齢求職者給付金と老齢厚生年金の同時に受け取ることは可能です。(会社員Bさんの場合)65歳以上で基本手当はありませんが、基本手当と老齢厚生年金を同時に受け取れる時期があります。(会社員Aさんの場合)

 

たとえば・・・

会社員Aさん(64歳11カ月で退職)

・会社員Aさんは、64歳11カ月で退職をし、65歳になってから基本手当を申し込むと、基本手当と年金を同時に受け取ることができる。

 

会社員Bさん(65歳1カ月で退職)

・会社員Bさんは、65歳1カ月で退職をしたので、高年齢雇用継続給付と年金を同時に受け取ることができる。

 

会社員Cさん(64歳1カ月で退職)

 ・会社員Cは、64歳1カ月で退職をしたので、基本手当か年金のどちらかを選択して受け取ることができる。

 

 つまり、会社員Aさんのように、64歳で退職をして、65歳で基本手当の申し込みをすることで、基本手当と年金を同時に受け取ることができる、お得な時期があるのです。

 

 

 

おわりに

65歳前後に退職される方に焦点を当て、「基本手当と年金の関係」をご紹介させていただきました。基本手当を受けたい方は、64歳11カ月で退職されると、基本手当と年金と期間を気にせず、安心して同時受給が可能ですね。しかし、給与面からみると、給与が1カ月分もらえなかったり、退職金が減額されたり、時期によっては賞与がもらえないということも考えられます。また、支給開始期間は定年だと、7日間の待機期間後に受給開始となること対し、自己都合による退職は、さらに2カ月(注)の給付制限期間後に受給開始となります。人生100年時代です。65歳を過ぎてもまだまだ働くよ-!という方も多いでしょう。厚生労働省は2021年4月より労働者の希望があれば、最長70歳まで定年を延長できることを企業の努力目標としました。それぞれのライフプランにあわせてよりよい選択を行ってください。今回の話がリタイアメントプランニングの選択肢の一つとなれば嬉しく思います。

 

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