2016年度住宅ローン利用者の実態調査から見えてくること
先月、住宅金融支援機構から2016年度民間住宅ローン利用者の実態調査が発表されました。
(2016年3月~2016年9月までに民間住宅ローンの借入をされた方に対する調査)
最近の住宅ローン利用者がどんな点を重視して選んでいるかなどがわかります。
これから住宅ローンを検討する人の参考になる様、FPから見た気になる点を解説します。
1.【住宅ローンの金利プランの選択】
・変動型 49.2%(前回は38.7%)
・固定期間選択型 36.9%(前回は25.3%)
・全期間固定型 13.9%(前回は36.0%)
前回は2015年11月~2016年2月の利用。
全期間固定型の利用者の割合が大幅に減っています…
フラット35の優遇制度「S」の金利引下げ幅が、2016年1月30日に▲0.6%から▲0.3%に下がったことも影響しているのかもしれません。
変動金利が向かない人はいても、固定金利が向かない人はいないのですが。
2.【利用した住宅ローンを選んだ決め手】
・金利が低いこと 69.6%(前回は54.0%)
・諸費用が安かったこと 20.0%(前回は14.9%)
・将来、金利が上昇する可能性があるので、
将来の返済額をあらかじめ確定しておきたかったから18.0%(前回は13.1%)
固定期間選択型のローンを選んだ方は、現在の固定期間が終了した後の金利がどうなるか確認しているでしょうか?
固定期間選択型を選ぶ方のうち、50.3%は固定期間10年の契約です。
10年固定型だと、全期間固定と同じようなものと考えてしまう方も多いのかもしれませんね。
そして、10年固定型の住宅ローンについては、「変動型」よりも金利が低い金融機関もあります。
けれどもそれは、当初の10年だけ金利を大きく引き下げてくれる場合なので、固定期間の10年が終了すると、その時点で金利引き下げ幅はかなり小さくなる契約になります。
「当初期間金利引き下げ型」と呼ばれるものです。
例えば人気の三井住友信託銀行の「当初期間金利引き下げ 固定プラン10年」の場合、2017年3月の金利は、
当初10年の金利 0.55% (店頭金利2.85%、2.3%金利引き下げ)
10年経過後の金利 ? (その時点の店頭金利から、最大1.4%金利引き下げ)
つまり市中の金利が上昇しなくても「金利の引き下げ幅」が縮小する契約なので、金利が上がらなかったとしても必ず0.9%支払金利は上昇することになります。
3000万円を返済期間35年で借入した場合、10年目以降およそ9,000円毎月の支払額が多くなります。
10年経過時点で市場金利が上がっていれば、これ以上の支払額アップになります。
「当初期間金利引き下げ型の10年固定」を選ばれる際には、始めの金利だけでなく、10年経過後の金利と支払額を必ず確かめましょう。
3.【金利上昇に伴う返済額増加への対応(固定期間選択型の利用者)】
金利が上昇した場合、返済額増加にどう対応するかの調査もありました。
・返済額圧縮、あるいは 金利負担軽減のため一部繰上返済をする 28.0%
・金利負担が大きくなれば、全額完済する 20.2%
・返済目途や資金余力があるので、返済継続 18.0%
・検討がつかない 18.6%
・借換する 14.3%
手持ち資金で対応できると答えた利用者が合わせて66.2%でした…
「考えないようにしている」「金利は上がらないと信じている」「何とかなると思っている」…こんな選択肢があったら、結構選ぶ人がいるのではないでしょうか?
本来であれば、変動金利や固定期間選択型の住宅ローンは、資金余力があったり返済期間が短くて金利上昇の影響が小さい方が選ぶべきものなわけです。
「検討がつかない」の18.6%もコワいですが、「借換する」14.3%もとっても気になります…
金利が上がる時期を見定めて、金利が上がる前の絶妙なタイミングで固定金利に借換えすることは可能でしょうか?
金利が上がると信じて、諸費用をまた負担して、今現在のローンよりも金利の高い固定金利型のローンに借換えをすることは、心情的に可能でしょうか?
(金利の上昇する局面は、固定金利の方が変動金利よりも先に上昇します。)
歴史的低金利の今、これを機に固定金利にも目を向けてほしいと思います。
0.05%でも低い金利を追い求めるより、家計のムダを省いたり、不必要な保険料をカットする方が効果があるかもしれません。
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