離婚前から知っておきたい「年金分割の手続き」
離婚が頭をよぎったとき、住まい・子どものこと・仕事・財産分与・養育費など、これから先のことを考えるため情報収集は必須です。
今回は、そのなかのひとつ「離婚時の年金分割」についてご紹介します。
手続きが複雑ですが、大切なお金のことなのでここでしっかり押えておきましょう。
年金分割でもらえるお金は意外に大きい
「離婚時の年金分割」とは、離婚した場合に夫婦おふたりの婚姻期間中の厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。
年金分割によって、老後の年金が年間20万円増えたとして、65歳~90歳まで25年間で年金を受け取る場合は500万円。
大きい金額ですよね。
しかし、「離婚してもいずれ相手方が国や会社から受け取る年金額は半分もらえる」というような誤解があると、離婚後に生活設計が変わってしまいます。
この年金分割については、以下の3つのポイントに注意が必要です。
(1)請求が必要
離婚と同時に自動的に年金分割がされるものではありません。
年金分割をするには、年金事務所で請求の手続きが必要です。
この手続きは、年金分割は、離婚してから2年を過ぎると請求できなくなってしまいます。
(2)分割できる年金って?
相手方の年金額がそのまま分割の対象になるのでもありません。
分割されるのは結婚期間中の厚生年金の記録です。
年金額の計算の基礎となる部分が分割する側の相手方は減り、分割を受ける側は増えます。
結婚期間中に相手方が自営業者で厚生年金に加入していなかった場合、年金分割はありません。
また、相手方が厚生年金に上乗せの年金がある会社にお勤めの場合でも、その上乗せは分割されません。
(3)半分ずつに分けるの?
どのような割合で分割するかは、必ず半分ずつとは限りません。
原則として離婚当事者間で合意した「按分割合」によります。
そのため、離婚のときにどんな割合で年金分割をするか決めておくことが大切です。
当事者の合意があっても分割される側の割合は50%以下となっているので、離婚の慰謝料のかわりに年金分割を多くするということはできません。
では、手続きは少し複雑ですが、大切なことなのでしっかりおさえておきましょう。
離婚前から知っておきたい年金分割の手続き
年金分割の手続きの主な流れをご紹介します。
年金分割の手続きの流れ
(1)年金分割のための情報提供の請求
離婚が成立する前でも、年金分割の話し合いに必要な年金記録の情報提供を受けることができます。
離婚後でもできる手続きですが、離婚時に話し合いをスムーズにするためにも事前に行うのが賢い選択です。
既に離婚調停をされている、話し合いをされている方は急いで請求をしましょう。
情報提供の請求は、当事者の一方だけでもでき、相手方の年金番号など不明な点があってもできますよ。
(2)年金分割について夫婦で合意
離婚の話し合いは、養育費・財産分与・慰謝料など多岐にわたります。
そのなかでつい年金分割のことは忘れがちですが、年金分割について按分割合を決めておくことを忘れないでくださいね。
当事者間で合意できない場合には、裁判所で調停や審判で決めることも可能です。
また、結婚期間中に専業主婦(扶養の範囲内で働く主婦を含む)など国民年金第3号被保険者だったことがある方は、「3号分割」という手続きで2008年4月1日から離婚するまでの「第3号被保険者期間」において、合意がなくても2分の1ずつに分割できます。
(3)年金分割の請求
年金の按分割合が確定したら、年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出します。
(1)の情報提供の請求をしただけでは、年金分割はされませんので、離婚後2年以内に必ず行いましょう。
提出した書類に不備がなければ、合意した按分割合で年金記録が分割され、後日、日本年金機構から「標準報酬改定通知」がそれぞれに郵送されます。
主な手続きはこんなイメージです。
年金分割の手続きは複雑で時間もかかるので、事前にスケジュールを立てて確認していきましょう。
年金分割の制度が複雑すぎてよくわからない方は、今すぐ年金事務所に電話し、「年金分割について教えてください。離婚はまだですが、離婚で話し合いをします」と問い合わせてくださいね。
その際「ねんきん定期便」または「年金手帳」がお手元にあると良いです。
また、既に離婚が成立されている方で手続きをされてない方は、すぐに年金事務所に確認してみましょう。
お役に立ちましたら、うれしいです。
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